Tokyo Trial (2016) / 東京裁判

最近、海外の一部の国家が好戦的になってきているような風潮を報道から感じてしまうのは私だけでしょうか?また最近、日本では「核を持つべきか、持たないべきか」という、戦後から近年まで口にするのもはばかられるようなテーマがニュースで取り上げられるようになってきており、危機感を覚えることがあります。私が考える不安要素というのは、「核を持つ、持たない」という事よりも、戦争を経験したことのない70歳までくらいの人々が、防衛のために安直に決断を下してしまい、それがのちのちに大きな犠牲を生んでしまう可能性を孕んでしまうのではないか、という点です。

8月上旬、日本ではこの時期、戦争の報道が多くなされます。世界のバランス・オブ・パワーが変化する兆候を見せている今、戦争を振り返り、その歴史をインプットした上で自分の考えを醸成していきたいと考えました。具体的には、戦時中の国民の考えや思想、なぜ日本は軍事国家へと突き進んでいったのか、戦前から戦後にかけての意識の変化、etc…を考察してみることにしました。その入口として、日本とカナダ・オランダが共同で制作した「Tokyo Trial (2016) / 東京裁判」を観ました。

舞台とあらすじ

このドキュメンタリードラマの舞台は、東京の現・市ヶ谷記念館でおこなわれた極東軍事裁判(Tokyo Trial, that is, International Military Tribunal for the Far East)です。第二次世界大戦直後、戦勝国11カ国から代表として送り出された判事たちが、日本の戦争指導者を裁く過程を描いています。このドラマを観ていくうちに、物語が単なる戦争を裁く話ではないことに気付くでしょう。判事の中には出身国の最高裁の判事を務める者も少なくなく、当然のことながら国の元首の使者というわけではなく、法律を司る者として職務を遂行しなければなりません。しかしながら、憎き敵であった日本の指導者を裁くため、感情的になる一面も見受けられます。また、半年で終わる予定だったこの軍事裁判が、1年経過しても終わることはなく、中には体力に限界を感じ始め、長期化を避けたいと考える判事も出てきます。

私は、この裁判の一番の焦点は、”戦争を「事後法」で裁けるかどうか”であると考えました。それまで戦争というのは犯罪ではなかったが、第二次世界大戦の日本軍による惨状を目の当たりにした判事たちの中で、正義のため、また第三次世界大戦が起こることがないよう、ニュルンベルク裁判と同様、「事後法」で解決しよう、という案が浮上します。しかし、その案に反対するのがインドからやってきたパル判事(イルファン・カーン)。確かに、事後法は例外的な措置であるため、一定のルールのもとで行っていた戦争の後に、敗戦国への罰則とも言えかねない事後法を適用することに対し抵抗を感じる判事がいてもおかしくはありません。

独立運動の最中であったインドから来日したパル判事。

最初の段階で、殆どの判事は、戦時中には規定されていなかった「侵略の罪(平和に対する罪)」を焦点にするべきだと考えます。しかし、それをはねのけるパル判事。オランダからやってきたレーリンク判事(マルセル・ヘンセマ)は、当初大多数側の立場でしたが、パル判事と交流する過程で徐々に自身の考えを見直すようになっていきます。そのような状況に業を煮やしたイギリス・ニュージーランド・カナダからの判事は、「遅々として進まない裁判はオーストラリアからのウェッブ裁判長に問題があるからだ」とし、裁判長を一時帰国させるよう裏で工作します。

実際の裁判の様子。真ん中がウェッブ裁判長。

戻ってこないかと思われたウェッブ裁判長ですが、彼は再び来日します。分断された判事たちの間で、どういった決断が下されるのでしょうか。

オランダと判事としての立場の間で揺れるレーリンク判事(左)。

感想

このドラマのストーリー以外の部分に関し、カメラワーク等の「魅せる技術」が評価できると思います。そして実際の裁判の映像が多用されているため、史実を伝える教科書として非常に素晴らしい。裁判だけではなく、当時の東京の町並みの映像もあり、戦後日本が急速に復興を遂げたということを実感することでしょう。また、幾つかの映像には着色が施されているためか、国会中継のように、東京裁判が最近の出来事のように思えます。日本人が社会の教科書で一度は観たことのある東京裁判の様子が映像で鑑賞でき、貴重な文献を見たときのような感動を覚えました。

第二次世界大戦の歴史に、その残虐性の高さから目を背けたくなる人々も多いと思いますが(私もその1人)、このドラマでは、<判事たちは感情に左右されることなく裁くことが出来るのか>という点、また、<戦勝国の関係性(例えばインドとイギリス)>にもスポットが当てられるため、かつてNHKが制作したトラウマになりそうなドキュメンタリー「映像の世紀」程ストレスを感じることなく観ることが出来ると思います。とは言え、「映像の世紀」も本当に素晴らしいドキュメンタリーですので、一度は観ることをおすすめします。こういった、他の放送局ではなかなか観ることのできない物語を、NHKにはクオリティに妥協することなく今後も作り続けてほしいと思います。

これから私たちが考えなければならないこととは

人間はひとたび戦争を起こしてしまうと、理性を失い「動物」になってしまいます。今一度、平和教育の見直し、そしてメディアに疑いの目を向けられる教育、戦争に目を向ける場を身近に作る、などするべきだと考えます。自分個人としては、近々戦争に関連した場所に行こうと考えています。このブログでどうやってかレポート出来たら良いなと思っています。

先日、ある神父さまが(私はクリスチャンではないのですが話を聞く機会がありました)、「最近、日本人は、職場の外で人と対話する機会が少なくなっている」というお話をされていました。確かに、多くの人々は、教育機関から離れると、一つのテーブルを囲み、じっくり人と議論する機会が激減します。これでは社会的なトピックを深く突き詰め、思考する力が衰える可能性があります。今、日本はメディアと政治家が国民を扇動しやすい状態になっているのではないでしょうか。要注意です。

戦争を経験したことのない私たちは、どうやって平和を維持していけるのか。二度と過ちを繰り返さないよう、戦争、防衛に関する新たな取り決めに対して、後悔しない選択をする必要があります。そのためには、個人の考えを持つ重要性を現政府およびメディアは伝えるべきですし、何より私たち一人ひとりが意識していかなればなりません。

<参照・引用>

NHKスペシャル ドラマ 東京裁判
http://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20161212

State Library Victoria
https://www.slv.vic.gov.au/

The Lunchbox (2013) / めぐり逢わせのお弁当

あらすじ

イラ(Nimrat Kaur)は主人のために、毎日愛情たっぷりのお弁当を作り、「ダッバーワーラー」と呼ばれる弁当配達人に託している。ある日、そのお弁当が間違って退職間近のサージャン(Irrfan Khan)のデスクに届いてしまった。

感想

主人公のインファン・カーンは、非常に深みのある演技をする役者さんだと思います。『スラムドッグ$ミリオネア』では、主人公を拷問にかける警察役を演じました。この映画では、その役とは打って変わって、枯れかけた中年役を演じています。作品によって、色々な顔を持っていそう。他の作品も観てみたいです。

また、もうひとりの主人公、ニムラト・カウルは、演技はさることながら、優しく語りかけるような声が魅力です。インドの女優さんの声といえば、『マダム・イン・ニューヨーク』の主人公、シュリデヴィや、『スラムドッグ$ミリオネア』のフリーダ・ピントの声も素敵。インドではキャスティングの際、演技力だけではなく、声を重視しているのかも。

主人公の後輩(Nawazuddin Siddiqui)も良い味出してます。暗い過去を持っているんだけど、根が明るくて、悲しいシーンもクスッと笑えるようなキャラクター。こういう演技がサラッと出来るのは素晴らしいですね。

また、今まで数々の日本語タイトルのセンスのなさに筆者は悲しんできたわけですが、このタイトルは良いと思います。「『お弁当』が誰と誰を『めぐり逢わせる』の?」、「そもそも外国のお弁当ってどんな感じだろう」と、心惹かれました。

テレビによって、日本人の殆どがインドに対してちょっとネガティブなステレオタイプを持ちがちだと思います(NY出身のインド系アメリカ人、コメディアンで俳優のアジズ・アンザリも時々自嘲気味にこのエピソードを引用する。グローバルにインド人に対する共通認識・固定観念があるのかもしれない)。この映画は、その認識を覆し、我々とインド人との距離を縮めてくれるような作品だと言えるでしょう。

オフィシャルサイト(英語)
http://sonyclassics.com/thelunchbox/home/

オフィシャルサイト(日本語)
http://lunchbox-movie.jp/

 

Slumdog Millionaire (2008) / スラムドッグ$ミリオネア

"Slumdog Millionaire" (Scholastic Readers)

あらすじ

主人公のシャマール(Dev Patel)は、インドで人気のクイズ番組『スラムドッグ・ミリオネア』に出演し、幅広いジャンルの問題に次々と正解する。スラム出身にもかかわらず、最終問題を残し、すべての問題に正解したことを不審に思った司会者は、彼を拷問にかけ、不正行為を暴こうとする。しかし、シャマールはインチキなどしていなかった。クイズの答えは、彼が生きてきた経験の中に、喜怒哀楽の記憶とともに確かに刻まれているのだった。

感想

この映画の1番の魅力は、クイズの各問題に正解する理由を、シャマールの一つひとつの経験と結びつけていくというユニークなストーリー構成だと思います!

また、インド社会の裏側がわかるのもおもしろいです。インドはIT分野を中心に優秀な人材を輩出する国家というイメージが大きいですが、見えないところで暴力や不正が存在していた(現在も?)ということがわかります。また、映画の中で、スラム出身の孤児は、犯罪に加担するか、もしくは人身売買を「され」なければ生きていくことが困難ということをほのめかしています。

主演のデーヴ・パテールは、今年のアカデミー賞で6部門にノミネートされている「LION/ライオン ~25年目のただいま~」(4月7日公開予定)の主役、サルーを演じます。彼を世界で一躍有名にした『スラムドッグ$ミリオネア』をぜひご覧ください。