Lost in Translation (2003) / ロスト・イン・トランスレーション

ロスト・イン・トランスレーション [DVD]日本にいる欧米人の殆どがこの映画を知っているのではないでしょうか?これを観て日本に来たという観光客(20代~30代)も少なく無いと思います(言い過ぎか?)。

ソフィア・コッポラの描く、外国人目線での日本人

ある日、友人のイギリス人・アメリカ人とこの映画を観ることになりました。イギリス人が、「日本人はこの映画をあまり良いと思わないかもしれない。違う映画を観ようよ」と提案してきました。そんなことを言われたら、ますます観たくなるではありませんか!映画を観ながら、ふむふむ、なるほど、彼女の言っている意味が確かに分かりました。この映画では日本人の性格がかなり極端な形で描かれていました。監督であるソフィア・コッポラ(Sofia Coppola)が見聞きしたステレオタイプな日本人像な感じが否めません。例えば、日本語が分からないのに日本語で指示を飛ばし続けるクレイジーなカメラマン、軍隊を感じさせるサラリーマン。これらは「日本人が勤勉である」ということを皮肉として表現しているのではないかと思います。私の考えでは、「日本」という異なる文化圏で働き始めた外国人が、ストレスを発散するために使用する処方箋のような役割を果たしているのが、この映画なのではないか、と推測しています。

日本での2人の出会い

簡単なあらすじです。主人公である俳優のボブ・ハリス(Bill Murray)がサントリーのテレビコマーシャルに出演するために来日。日本の独特の接待や仕事のスタンスにとまどうボブ。また、アメリカで待つ妻ともなんとなくうまくいってない今日このごろ。言葉の通じない日本の中心で、孤独を感じるボブ。そして、もう一人の主人公スカーレット・ヨハンソンが演じるシャーロットは、カメラマンの夫を持つ若い妻。夫の仕事で日本にやってきますが、夫は一日中仕事で、さらに女の影も見え隠れする。彼女もまたボブのように言葉の通じない日本で、孤独で不安な時間を過ごします。そんな2人がホテルのバーで出会い、少しずつ友情が芽生えていきます。

この映画の魅力

DIAMOND☆YUKAIが演じる熱血カメラマンと、ボブのやり取りがおもしろく、笑ったときに、イギリス人とアメリカ人から「このカメラマンは何を言っているの?」と聞かたことが印象に残っています。なるほど。日本人の発言には日本語のサブスクリプションがないのです。日本語が分からない外国人が、ボブとシャーロットに感情移入できるようになっていました。これが、きっと彼らにとってのこの映画の大きな魅力なのではと考えます。そして、もうひとつは、年齢や立場を超えた2人の友情でしょう。お互いの複雑な境遇、東アジアの街で感じるエスニシティと孤独。そういった要素が引き起こしたケミストリーの結果としての2人の友情が、この映画を独特で、魅力的なものにしているのでしょう。

Palmeras en la nieve (2015) / Palm Trees in the Snow / ヤシの木に降る雪

Palmeras en la nieve

主人公のクラレンスは、あるとき叔父、キリアンの日記を読み、彼が赤道ギニアのある一人の女性とその子どもに定期的に送金していたことを知る。不思議に思ったクラレンスはその理由を知るべく、赤道ギニアへ向かう。

日記が記されていたのは、かつてスペインに植民地支配されていた赤道ギニアの島、ビオコ。キリアンは、ココア農園に従事する父の仕事を手伝うべく、ビオコに向かった。現地に着いたキリアンは、初めて見る島の自然の美しさに驚き、好奇心に胸をときめかせるが、待っていたのは現地人を威圧的に支配する同僚の姿だった。若いキリアンは、ショックを受けながらも現地の労働者の雇用主として仕事に従事し、また同僚に誘われ性的労働者の女性とスペイン人が集まるバーにも足を運ぶようになる。そんな中、父が倒れたことをきっかけとし、現地の病院で看護師として働く女性、ビシラと出会う。キリアンはビシラの優しさ、知性や考え方に触れて、それまでの堕落した自分を正すと同時に、だんだんと彼女に惹かれていくのだった。

主人公を演じるのは、Adriana Ugarte。自分の直感や本能に一直線に従う女性の役を演じます。少し心配になっちゃうくらい一直線。そして彼女の叔父の役を演じるのが、この映画のもう一人の主人公で、キリアンを演じるMario Casas。純粋で優しい役柄にハマっています。そして、キリアンの恋人役を演じるのはBerta Vázquez。美しいだけではなく、慈愛や強さといった内面の良さを伝えることが出来る素晴らしい女優さんです。その他、Alain HernándezやMacarena Garcíaなど、「実力揃い!」と思わせるような演技力を持つ俳優・女優さんが出演しています。

キャスティングの良さに加え、映画の作りこみも観る価値がある理由です。プランテーションや海岸のシーンのカメラワークが秀逸で、ビオコの美しさがとても引き立ちます。丁寧に作られた映画だということが本当によく分かります。

また、キリアンとビシアの恋愛も美しく描かれています。先進国の合理的な考え方にはない、現地の教えを大切にするエキゾチックな考え方に惹かれるキリアンの気持ちが何となく分かりますし、観ている人々は皆ビシラが好きになるのではないでしょうか?

また、この映画をきっかけとして、スペインのみならず、ヨーロッパ各国が赤道ギニアを支配していたという歴史を知り、彼らの権利や、日本を含め先進国の傲慢さを考えさせられる機会となりました。

私たちも、主人公のクレランスのように、ファミリーヒストリーを追うと、もしかしたら思いもよらない過去が明らかになるかもしれませんね。